総北自転車部 仮面ミーティング

・ほぼセリフだけの話です。舞台劇っぽい感じで
・巻&坂で腐向け。ちょっと下品なネタがあります。

【主な登場人物】
コードネーム:スネイク/ベアー/クール/オーサカ &その他


***

「遅くなりました……」
ベアー「おう、クール」
クール「すみません、授業終わるのが押してしまって」
オーサカ「ププッ。『クール』とか笑っちゃいますわ。スカシのくせに」
クール「うるさいな、オーサカ」
オーサカ「ナンやと?ワイはホントのこと言っただけや」
スネイク「こら、仲間割れは止めろ。クール、オーサカ」
クール「すみません、金城さん」
スネイク「本名では呼ぶな、今……いや、クール。今日は『総北自転車部 仮面ミーティング』なんだからな。ここではお互いをコードネームで呼ぶという決まりだ」

スネイク「(辺りを見回して)よし、全員揃ったな。では、始めようか」
クール「あれ、『スパイダー』と『メガネ』は?」
ベアー「今回は巻島と小野田……じゃなくて、スパイダーとメガネについての会合だからあいつらは抜きだぞ」
オーサカ「そうなんや、クール。ワイ、見ちゃったんや……(手で顔を覆う)」
スネイク「オーサカ、全員揃ったことだし、ここで皆に説明してくれないか」
ベアー「いったい、何があったんだ?」
オーサカ「あの……。話しにくいんやけど、スパイダーとメガネが部室でチュウしてるの見てまったんや……ワイ」
クール「チュー?ネズミの真似?」
スネイク「(声を出さずに笑いをこらえる)」
ベアー「キスしてた、ってことだろ……」
クール「……は、はぁ?」

オーサカ「ワイの話を信じてもらえんのは最もや、って思うんやけど、ホンマ、これはホンマの話なんや。この前の水曜、ワイ、遅くまで居残り練習しとって、帰ってきたらまだ部室に明かりが点いとって。あれっ?と思ってそっと覗いてみたらあのふたりが抱き合って、チュってしてたんや……ワイ、びっくりしてもうて」
クール「ま、まさか。何かの見間違いなんじゃないのか?」
オーサカ「ウソやない。ホンマなんや!」
ベアー「確かに仲はいいけどな、あいつら。スパイダーはメガネのこと、自分の子どもみたいに可愛がってるよな。目に入れても痛くなーいみたいな感じで。なんせ、初めて出来たクライマーの後輩だもんな。メガネも凄くなついてるし」
オーサカ「ですやろ?」
ベアー「でも、単に仲がいいだけじゃねぇのか。巻島、もといスパイダーからはオレは何も聞いてねえぞ」
オーサカ「スパイダーが全部オッサンに話すとは限りませんで。案外信用されてないんかも……」
ベアー「何だとゴラァ。あと、オッサンって言うな。ここではベアーと呼べ!」
スネイク「まぁまぁ。二人とも仲間割れは止めろ。確かに、スパイダーは何でも話すとは限らないからな。あいつは秘密は守るタイプだ」
クール「(顎に手を当てながら)でも、小野田……じゃない、メガネですよ。」
スネイク「メガネが、何だ?クール」
クール「メガネは秘密を守れるタイプだとはオレには思えません。あいつは嬉しいことも悲しいことも全部顔に出るタイプです。だから、『スパイダーと付き合う』なんてことになったら果たして隠し通せるんでしょうか?」
ベアー「確かに……『ボク、巻島さんと付き合ってるんですっ。エヘッ(はぁと)』ってなりそうだよな」
オーサカ「で、でも!ホンマに見たんや、ワイ……」
スネイク「……ふむ。オーサカ、お前が二人が『何かしている』のを見たのは確かだろう。でも、それは単に何かのやりとりをしていた現場であって、キスしていたとは限らないかもしれない。目に入ったまつ毛を取っていたり、筋肉の付き方のチェックをしていたり、マッサージだったり、案外たわいもないことかもしれないな」
オーサカ「そうなんかな……みなさんにそう言われると、怪しくなってきます……うーん。ワイの見間違いだったのかも。確かに、小野田くん、じゃない、メガネが秘密を隠し通せるとはワイも思えんです。嬉しくて嬉しくて、皆に言っちゃうタイプですもん」
スネイク「結論が出たようだな。じゃあ、この辺で今日の会はお開きに……」

その時、ガラッと部室の扉が開いた。
「あれっ、皆さん。お揃いで何してるんですか?今日は部活は休みだって聞いてたんですけど」

スネイク「す、杉元!いや、何でもないんだ、ちょっと話し合いをしていてな」
杉元「そうですか。僕は荷物を取りに来たんですけどね。そうだ、皆さん聞いて下さいよー。校内に、けしからん人たちがいるみたいです」
ベアー「なんの話だ?」
杉元「いま部室の裏で拾ったんです。見て下さい、これ。これって、アレですよね……?(何か白い紙を広げる)」
ベアー「うわっ。こんな汚いものさっさと捨てろよ……!」
スネイク「使用済みのゴム、か……」
杉元「直接触るのはイヤなので、ティッシュで包んできたんですよ。さすがに放置しておくのはどうかなと思いまして。僕だってこんなの早く捨てたいですよ。ゴミ箱、ゴミ箱……」
オーサカ「こんなトコ捨てんと、まっすぐ焼却炉持ってけ!」
クール「(見たくない物からそっと目を背ける)」

***

金城「……という結論になったぞ、巻島。皆にはなんとかごまかしておいたからな」
巻島「恩に着るっショ、金城。助かった」
金城「小野田と付き合うのもいいが、バレないようにしろよ?部内の士気に関わるからな」
巻島「分かってる。今回はウカツだったっショ。坂道にも釘さしとくヨ」
金城「……で、な。ゴムも……ちゃんと始末しとけよ」
巻島「はァ? ゴムって?」
金城「い、いや。お前たちが使ったんだろ、アレ。部室の裏で、杉元が見つけて大騒ぎしてたぞ。そっちも適当にごまかしておいたが」
巻島「……オレたち、まだそこまで進んでない……ショ……(恥ずかしそうに)」
金城「えっ」

【完】

***
いつも以上に下らなくてゴメン!
ゴムは他の誰かが使ったもの……ということで。
2012/09/10 七篠