このあと無茶苦茶XXXXした

『今日は巻島さんの家に泊まります。坂道』

 よしっ。坂道はケータイの送信ボタンを押して、家にいる母親にメールを投げた。
 今日は土曜日で、いまは部活の練習終了後。巻島に「今日、家族いないから泊まりに来ないか」と誘われた坂道はウキウキ浮かれた気分で「恋のヒメヒメパラダイス」をフフンフンフーン♪と鼻歌で流した。

「機嫌良さそうだな、小野田は」
「はいっ、古賀さん」
 ホイールのブレを整備していた2年生の古賀が、ロッカーの前で制服に着替え中の坂道に横から話しかけてきた。巻島は職員室に何か用事があるらしく、坂道とは後で裏門坂の門で落ち会う約束になっていたのでこの場にはいない。ちょうど部室には古賀と坂道のふたりだけだった。
「この後、巻島さんとデートでもするのか」
「えっ」
 あの……ええと……。少女のように頬を染めた坂道に古賀は続けた。
「そうか……。すごくご機嫌みたいだからやっぱりそうなのかな、って思ったんだ」
「そ、そぉです……」
 今更隠すのも逆に恥ずかしく、坂道は素直に頷いた。インハイ前のこの夏から、巻島と坂道が付き合いだしたことは部員の皆はもう知っている。最初はふたりだけの秘密にするつもりだったが、坂道がお喋りな鳴子にこっそり相談してしまったのが運の尽きで、いつのまにやら全員が知るところとなってしまい、彼らのお付き合いは部内での黙認状態となっていた。

「デートかぁ。その後は、巻島さんの家に泊まるのかい。明日は休みだしね」
 そこまで言った後、古賀はさらりと爆弾発言を投下した。
「小野田は、巻島さんともうセックスした?」
「…………えっ、ええッ」
 坂道の顔全体どころか身体全体がボボボボッと炎のように頭から足のつま先まで連鎖反応で真っ赤になった。
「えっ、えーと、そのっ……あの……そのぉ……」
 挙動不審になった坂道は二の句が告げなくなって、古賀の前でひどくうろたえた。
「ハハ、悪かったな。こんなこと聞いちゃって」
 おろおろとうろたえる坂道の横で、こんな時でも落ち着いている古賀は坂道の背中をポン、と優しく叩いた。
「そんなにうろたえるってことは、まだ未経験だってことか……負けたな」
「……え、何がですか? 負け、って」
 いやぁ。変な質問からようやく落ち着いてきた坂道の疑問に古賀は続けた。
「実は手嶋と賭けてたんだ、『巻島さんと小野田がもう経験済かどうか』ってね。オレは経験済の方に千円賭けたんだが……」
 古賀はメガネを外して、ポケットから取り出したチーフでレンズを乾拭きした。
「その反応じゃ、まだまだ。ってところみたいだな」
 負けてしまって残念だよ、悪かったな。メガネを装着しなおした古賀は皮肉っぽく口端を上げた。

「坂道!」
 坂道が困り果てていたちょうどその時、ドアの方から彼を呼ぶ聞き馴染んだ声がした。巻島が部室に顔を出したのだった。
「……巻島さん」
 古賀からの下衆なプレッシャーから逃れたくて、坂道は部室に来た巻島の方へ幼子のようにタタタと駆け寄り、巻島の体を楯にして古賀の不躾な視線から身を隠した。
「校門で待ってたのになかなかおまえが来ないから、見に来たっショ。どうかしたのか?」
 不審がる巻島は溺れる相手を助けるように可愛い恋人の手をぎゅっと掴んだ。
「何でもないですよ、巻島さん」
 メガネのブリッジを中指でくい、と上げながら古賀はしれっとした顔で言う。
「オレは坂道に聞いたんだ。おまえには特に聞いてないっショ」
 小動物のようにぶるぶる怯える坂道の手を握りながら、巻島は古賀の方を細い眼でジロリと睨む。
「でも、何でも無かったんです、巻島さん。ほんとですよ」
「ふうん……」
 渋い顔をした巻島だったが、たたみかけるような坂道の言葉には特に逆らわず、この場はなんとか収まった。

*    *    *


「オレたちの関係をダシにするなんて、マジヒドいっショ。今度あいつらふたりともオシオキしてやらねぇとナァ」
 陽が落ちる前の夕暮れの、巻島の部屋で。自分の腰のあたりでゆるゆると動く坂道の黒い髪を撫でながら、巻島はあきれた。つい先程の古賀と坂道の空気を怪しんだ巻島は、坂道を強引に抱こうとした。まだ明るいからエッチなことは恥ずかしいですと嫌がった坂道のために遮光カーテンを引き、暗闇にまぎれて坂道から古賀とのやりとりをムリヤリ聞き出したのだった。
「でっでも、古賀さんも手嶋さんも、きっと悪気があったワケじゃないと思うんですけど……たぶん……」
 唾液で濡れて、てらてらと光る巻島の膨張した欲望を右手の指で一所懸命扱きながら、坂道はふたりの2年生のことを庇った。ベッドサイドのスタンドのオレンジ色の光だけがふたりの裸体を照らしている。いまは恋人たちのお愉しみの時間であった。
「まァいいケド、どうせ童貞たちにはまだ分かんねェだろうしなァ」
 おっと……おまえもまだ童貞……だったか。巻島は坂道の後ろ側の丸みをぐにぐにと両手で揉みながら
「こっちは、もう違うケド?」
 丸みの間の慎ましい蕾に指を伸ばし、内側を充分に寛がせた。
「あっ……ぅぅん……」
「もう頃合いショ。そろそろ、いいだろ?」
 熱せられた坂道の甘い嬌声のなか、ずぷ……と坂道の内側に巻島は身を沈めた。

 ふたりが付き合っていることが部内で発覚してから、古賀が坂道を好奇の目で見ていることに巻島は気づいていた。そこに愛という成分が含まれているかどうかはさて置いても、他の男にこの可愛い恋人を特別な目で見られたくはないし、なおさら取られたくないという独占欲が巻島の心を黒く染める。嫉妬心は彼の欲望を鉄より硬くマグマよりも熱くたぎらせ、いつもより強めに巻島は坂道の身体を激しく揺さぶった。
「ま、まきしまさぁん。そんな、強くぅ、突いちゃ、らめ……! ひゃ、ぁ……あぁ……」
 恥じらいに身をよじり何度も荒い息を吐く坂道の上で、恋人の様子を伺った巻島は前後の動きを止めた。
「どうした、坂道ぃ。痛いのか?ここでやめるショ?」
 静止したまま巻島は優しく坂道の頬を撫でながら聞く。
「ち……ちがうん、ですっ」
 あの、あのぉ……。大きな目の端にうるうると涙を盛り上げながら首を振る坂道は必死で言葉を紡ぐ。
「ボク、感じ、すぎちゃってぇ。あ、ぁっ、んぅ。このまま、奥まで、いっぱい突かれたら、ボク、もっと、おかしく、なっちゃいますよぉ……」
 濡れた瞳で艶っぽく喘ぐ恋人の意外な要求に、巻島は目の前にあるひどく勃ちあがった坂道の欲望を指で持ち上げ、おおげさに扱き出した。
「ひ、あぁっ、んぅ……!」
「そんなコト言われちゃ、まさかもう止められるワケねェだろ。大人ナメんなっショ」
 大きく開いた坂道の脚を更に大きく開かせ、片方の腿を抱いて巻島は再び腰をぐい、と進めた。
「らっ、らめぇ……。もっと、へんに、なっちゃ……あ、ぁっ。や、やぁ……さっきも先にイッたばっかりなのに、またイクっ、イッちゃうよぉぉ……あん、あぁん」
 強く挿入されながら同時にきつい愛撫を受けた坂道の背骨がひどく反り、快楽を求める腰が淫らにうずく。
「ほんとは好きなクセに……。今度は自分でシコるっショ、挿れられながらする方が好きだろ?」
「は、はぁい……っ」
 悦びに目を細めながら、坂道は自分の欲望に手を伸ばす。その摩擦に連動して、いやらしく熟した内側は巻島の硬さを求めぐにぐにと蠢きつづけた。

(古賀も、こんな可愛い坂道の姿は知らねェだろうヨ。坂道は、オレだけのもんっショ)
 巻島の昏い欲望を受け入れ夢中で自慰に耽る恋人の艶っぽい格好を眺めながら、自分だけが知る坂道の特別な姿に巻島はひとり目を細めてほくそ笑んだ。

【終】
2014/08/16 七篠



<あとがき>
夏だしエロい無配本でも作ろうかな!……というコンセプトだけで出来た話です。
タイトルは何か流行ったフレーズ風で。